赤い実(五)
「考えると、不思議なもんですね。」
「それだから、美しい実のなるのも、木には、深い意味があるので、自分の種類を保存することになるのです。」
「人間は、どうなんですか。」
「どう、おまえは考えるの。お父さんや、お母さんは、だんだん年をとって、働くことができなくなります。その時分には、おまえたちは大きくなって世の中のためにつくし、また、家のために力とならなければならない。そして、私たちの力でできなかったことをもやりとげなければならないのです。」とおっしゃいました。
義雄さんは、お母さんのお話をきくと、いっそう、赤い実がなつかしくなりました。 その赤い実を、またざくろの木にさしておこうかとも思ったが、それよりは、お庭の日当たりのいいやわらかな土にうずめてやったほうがいいと思って、そうしました。
義雄さんには、将来の楽しみが一つできました。 来年の芽の出る春が待たれたのであります。
