夢占(二の二)
すると牝鹿は、ふと思いついて、これはちょうどいい折だから、こういう時に牡鹿をおどかして、もうこののち海を渡って淡路へ行くことを、思い止まらせてやろうと考えて、でたらめな夢占をたてました。 それは、頭に草が生えたとみたのは、かりゅうどの矢が首に当たる知らせで、背中に雪の積もったのは、殺されて塩漬けにされる知らせだというのです。
「だから今日は淡路へ渡るのは止して、ゆっくりここで遊んでおいでなさい。」
と牝鹿はいいました。
「海を渡ればきっと途中でかりゅうどに射られて、殺されるかも知れません。」
そう聞いて、牡鹿はこわくなりました。 どうしようかと思って、とうとうその日は一日ぐずぐず暮らしていましたが、日が暮れかかると、どうしてもがまんができなくなりました。 もうなんでも野島へ渡らずにはいられなくなりました。 そこで夢野の牝鹿の止めるのもきかずに、とうとう出かけて行きました。
するとまったく占いのとおり、海を渡る途中かりゅうどに見つかって、牡鹿は首を射られて殺されました。 そしてそのなきがらは、雪のような塩の中に詰められて、人に食べられてしまいました。
ですから、うっかりじょうだんに占いなどを立てると、それがほんとうになって、とんだ災難をうけることがあるものです。
