魔術(七)
それでも私はまだ首を振って、容易にその申し出しに賛成しようとはしませんでした。 所がその友人は、いよいよ嘲るような笑を浮べながら、私とテエブルの上の金貨とを狡るそうにじろじろ見比べて、「君が僕たちと骨牌をしないのは、つまりその金貨を僕たちに取られたくないと思うからだろう。それなら魔術を使うために、欲心を捨てたとか何とかいう、折角の君の決心も怪しくなってくる訳じゃないか。」
「いや、何も僕は、この金貨が惜しいから石炭にするのじゃない。」
「それなら骨牌をやり給えな。」
何度もこういう押問答を繰返した後で、とうとう私はその友人の言葉通り、テエブルの上の金貨を元手に、どうしても骨牌を闘わせなければならない羽目に立ち至りました。 勿論友人たちは皆大喜びで、すぐにトランプを一組取り寄せると、部屋の片隅にある骨牌机を囲みながら、まだためらい勝ちな私を早く早くと急き立てるのです。
ですから私も仕方がなく、しばらくの間は友人たちを相手に、嫌々骨牌をしていました。 が、どういうものか、その夜に限って、ふだんは格別骨牌上手でもない私が、嘘のようにどんどん勝つのです。 するとまた妙なもので、始は気のりもしなかったのが、だんだん面白くなり始めて、ものの十分とたたない内に、いつか私は一切を忘れて、熱心に骨牌を引き始めました。
友人たちは、元より私から、あの金貨を残らず捲き上げるつもりで、わざわざ骨牌を始めたのですから、こうなると皆あせりにあせって、ほとんど血相さえ変るかと思うほど、夢中になって勝負を争い出しました。 が、いくら友人たちが躍起となっても、私は一度も負けないばかりか、とうとうしまいには、あの金貨とほぼ同じほどの金高だけ、私の方が勝ってしまったじゃありませんか。
するとさっきの人の悪い友人が、まるで、気違いのような勢いで、私の前に、札をつきつけながら、「さあ、引き給え。僕は僕の財産をすっかり賭ける。地面も、家作も、馬も、自働車も、一つ残らず賭けてしまう。その代り君はあの金貨のほかに、今まで君が勝った金をことごとく賭けるのだ。さあ、引き給え。」
