かちかち山(二の二)
しかたがないので、たぬきはまた先に立って、こんどは何でも早く向こうの山まで行きつこうと思って、うしろもふり向かずにせっせと歩いていきました。うさぎはそのひまに、ふところから火打ち石を出して、「かちかち。」と火をきりました。たぬきはへんに思って、 「うさぎさん、うさぎさん、かちかちいうのは何だろう。」
「この山はかちかち山だからさ。」
「ああ、そうか。」
と言って、たぬきはまた歩き出しました。そのうちにうさぎのつけた火が、たぬきの背中のしばにうつって、ぼうぼう燃え出しました。たぬきはまたへんに思って、 「うさぎさん、うさぎさん、ぼうぼういうのは何だろう。」
「向こうの山はぼうぼう山だからさ。」
「ああ、そうか。」
とたぬきが言ううちに、もう火はずんずん背中に燃えひろがってしまいました。たぬきは、 「あつい、あつい、助けてくれ。」
とさけびながら、夢中でかけ出しますと、山風がうしろからどっと吹きつけて、よけい火が大きくなりました。たぬきはひいひい泣き声を上げて、苦しがって、ころげまわって、やっとのことで燃えるしばをふり落として、穴の中にかけ込みました。うさぎはわざと大きな声で、 「やあ、たいへん。火事だ。火事だ。」
と言いながら帰っていきました。
