三輪の麻糸(二)
お姫さまのおとうさまとおかあさまは、ふしぎに思って、どうかしてそのお婿さんの正体を見届けたいと思いました。
そこである日お姫さまに向かって、「今夜お婿さんの来る前に、部屋にいっぱい赤土をまいてお置き。それから麻糸を針にとおしておいて、お婿さんの帰るとき、そっと着物のすそにさしてお置き。」といいつけました。
お姫さまはその晩いいつけられたとおり、大きな麻糸の玉をお婿さんの着物のすそに縫いつけておきました。
あくる朝見ると、麻糸の先は針がついたまま戸の鍵穴を抜けて、外へ出ていました。
そして麻糸が引かれるにつれて、糸巻はくるくるとほぐれて、もう部屋の中にはたった三まわり、輪になっただけしか、糸は残っていませんでした。
お婿さんが戸の鍵穴から出て行ったことが、これで分かりましたから、お姫さまはその糸をたぐりたぐり、どこまでもずんずん行ってみますと、糸はおしまいに三輪山のお社の中に入って、そこで止まっておりました。
それではじめてお婿さんが大物主命でいらっしゃったことが分かりました。
そして糸が三輪あとに残っていたので、その山をも三輪山と呼ぶようになりました。
