赤い玉(二の一)
さてこの天日矛命というのは、もと新羅の国の王子でした。 それがどうして日本へ渡って来て、こちらに住むようになったか、それにはこういうお話があります。
新羅の国の阿具沼という沼のそばで、ある日一人の女が昼寝をしておりました。 するとふしぎにも日の光が虹のようになって、寝ている女の体にさし込みました。
すると間もなく女は身持ちになって、やがて赤い玉を一つ生み落としました。 ちょうど女の寝ていた時、そばを通りかかって様子を見ていた一人の百姓が、はじめからふしぎに思って、どうなるかと気をつけていましたが、女が赤い玉を生んだのを見て、それをもらって帰りました。
この百姓は谷の間に田を作っていました。 ある日そこで働いている男たちの食べ物を牛に背負わせて運んで行きますと、ふと王子の天日矛に途中で出会いました。 王子は百姓が人通りのない谷奥へ牛を引いて行くのを妙に思って、
「これこれ、牛を引いてどこへ行くのだ。 谷底の人のいない所で、殺して食べるつもりだろう。」
といいながら、百姓をつかまえて、牢屋へ連れて行こうとしました。
