赤い玉(一)
これも大国主命が、八千矛をつえについて、国々をめぐって歩いておいでになる時のことでした。 ある時摂津国の難波の津までおいでになりますと、見慣れない神さまが、海を渡って向こうからやって来ました。 命が、
「あなたはだれです。」
とお聞きになりますと、その神さまは、
「わたしは新羅の国からはるばる渡って来た天日矛命というものです。 どうぞこの国の中で、わたしの住む土地を貸して頂きたい。」
と頼みました。 命はしばらく考えておいでになりましたが、
「この国はわたしの治めている土地で、あなたに貸して上げる場所といって、ほかにありません。 では海の中を貸しましょう。」
とおっしゃいました。
こういわれて、天日矛命は、困って帰って行くかと思いのほか、
「では海を拝借いたします。」
といって、腰につるした剣を抜いて、海の水をかき回しますと、みるみるそこへりっぱな御殿が出来上がりました。 大国主命はそれをごらんになると、
「これはなかなかえらい神だ。 用心をしなければならない。」
と思って、家来にいいつけて摂津国を固くお守らせになりました。
