赤い実(二)
「なんですか、お母さん。」と、義雄さんは、すぐにやってきました。
「お母さんは、目がわるくなって、とおらないから、ちょっと糸を針孔にとおしておくれ。」と、おっしゃいました。
これをきくと、義雄さんは急に胸がふさがって、悲しくなりました。
「お母さんは、まだおばあさんじゃないんでしょう。」と、義雄さんはききました。
「いいえ、もうおばあさんなんですよ。」
こうおっしゃったお母さんの言葉に、やさしい義雄さんは、目の中に、熱い涙がわいてきました。 糸をとおしてあげて、ふと、庭さきを見ると赤いものが、目にとまったのです。
「あの、赤いのはなんだろうな。お母さん、あの赤いのはなんでしょうね。」
「どれですか。」
「ざくろの木の、あの枝さきについている……。」
すでに、黄色くなった葉が落ちてしまって、ざくろの木は枝ばかりになっていました。 その一本の枝のさきに、小さい真っ赤なものが、ついていたのです。 そして、それはなんであるか、お母さんにもわかりませんでした。
義雄さんは、庭に下りて、すぐにざくろの木に登りはじめました。
