浦島太郎(四の一)
浦島は海ばたに立ったまま、しばらくそこらを見まわしました。 春の日がぽかぽかあたって、いちめんにかすんだ海の上に、どこからともなく、にぎやかな舟うたがきこえました。 それは夢のなかで見たふるさとの浜べの景色とちっともちがったところはありませんでした。 けれどよく見ると、そこらの様子がなんとなくかわっていて、あう人もあう人も、いっこうに見知らない顔ばかりで、むこうでもみょうな顔をして、じろじろ見ながら、ことばもかけずにすまして行ってしまいます。
「おかしなこともあるものだ。たった三年のあいだに、みんなどこかへ行ってしまうはずはない。まあ、なんでも早くうちへ行ってみよう」
こうひとりごとをいいながら、浦島はじぶんの家の方角へあるき出しました。 ところが、そことおもうあたりには草やあしがぼうぼうとしげって、家などはかげもかたちもありません。 むかし家の立っていたらしいあとさえものこってはいませんでした。 いったい、おとうさんやおかあさんはどうなったのでしょうか。 浦島は、
「ふしぎだ。ふしぎだ」
とくり返しながら、きつねにつままれたような、きょとんとした顔をしていました。
するとそこへ、よぼよぼのおばあさんがひとり、つえにすがってやってきました。 浦島はさっそく、
「もしもし、おばあさん、浦島太郎のうちはどこでしょう」
