スプーン三杯
四月一日の朝、しんじは五時に起きた。 しんじは砂糖の入れ物と塩の入れ物を出して、中身を入れ替えた。 娘のさやかは、毎朝コーヒーに砂糖を三杯入れる。 三杯も塩を入れたら、どんな顔をするだろう。 しんじは笑いそうになるのを我慢して、寝室に戻った。
七時。 さやかが台所に来た。 しんじは新聞を読むふりをして、待った。
ところが、さやかはコーヒーを二つ入れた。
「お父さん、今日は私が入れてあげる。砂糖、三杯だよね」とさやかは言った。
しんじは断ろうとしたが、うまい理由が思いつかなかった。 さやかの手には、砂糖の入れ物がある。 中身は塩のはずだった。
さやかはスプーンで三回入れて、かき混ぜた。 飲まなければ、五時に起きた理由を話すことになる。
一口飲んで、しんじは動きを止めた。
「……おいしい」
「四月一日だからね」とさやかは言った。 さやかは、五時に起きた父を廊下から見ていた。 そして、本物の砂糖を机に置いた。
しんじは、来年はもっと早く起きようと思った。
