電信柱と妙な男(四)
このとき、電信柱がいうのに、「ときどき怖ろしい電気が通ると、私の顔色は真っ青になるのだ。みんなこの傷口は針線でつつかれた痕さ。」といいました。
すると、妙な男は急に逃げ出して、「やあ、危険! 危険! おまえさんにゃ触れない。」といったが、高い屋根に上がっていて下りられなかった。
「おい小男さん、もう夜が明けるよ。」と、電信柱がいった。
「え、夜が明ける? ……」といって、妙な男は東の空を見ると、はや白々と夜が明けかけた。
「こりゃたいへんだ。」といいざま、電信柱に飛びつこうとして、またあわてて、「や、危険! 危険!」と、後じさりをすると、電信柱は手をたたいて、ははははと大口開けて笑った。
「小男さん、私は、こうやっていられない。夜が明けて人が通る時分には、旧のところへ帰って立っていなければならんのだ。おまえさんは、独りこの屋根にいる気かね。」と、電信柱はいった。
