終電を逃した夜
終電を逃した。 駅の時計を見上げたとき、もう間に合わないことは分かっていた。 急いでもどうにもならないので、私はゆっくり歩いて帰ることにした。
夜の街は、昼間とはまるで違う顔をしていた。 店の灯はほとんど消えて、通りはとても静かだった。 自分の足音だけが、やけに大きく聞こえた。 街灯の下を通るたびに、自分の影が伸びたり縮んだりした。 こんなに静かな夜を、私は久しぶりに感じた気がする。
いつもなら電車の中でスマホばかり見ていて、こんな景色には気づかなかった。 急いでばかりいると、見えなくなるものがあるのかもしれない。 そう考えると、終電を逃したことも、そんなに悪くない気がしてきた。 少し後悔していた気持ちが、いつの間にか消えていた。
遠くに、自分の住む街の明かりが見えてきた。 家に着くころには、心が少し軽くなっているような気がした。
