忠義な犬(二の二)
ところが驚いたことには、切られた犬の首は、いきなり飛び上がって、りょうしの眠っていた頭の上の木の枝にかみつきました。 すると暗やみの中から、うう、うう、とうなるようなものすごい声が聞こえました。 やがてばっさりと、まるで大木でも倒れたような音がして、何か上から大きなものが落ちてきました。 りょうしは驚いて、火をともしてよく見ますと、四五間もありそうな長さのおそろしい大蛇が、とぐろを巻いたまま落ちてきたのでした。 そののどに犬の首がしっかりとかみついていました。 木の上に住んでいた大蛇が、夜中に、りょうしをのもうと思って出て来たのを、賢い犬が見つけて、主人を起こして助けようとしたのです。 それが主人に分からなくって、かわいそうに殺されてしまいましたが、主人のためを思う一念が首に残って、飛んでいって、大蛇をかみ殺してしまったのです。
りょうしはつくづくかわいそうなことをしたと思って、涙をこぼしながら、死んだ犬のために、りっぱなお墓をこしらえてやりました。 忠義な犬のお墓だといって、みんながおまいりをして、花やお線香を上げました。
