金の線
日曜日の朝、私は台所のテーブルに新聞紙を広げて、割れた湯呑みを並べた。 母からもらった湯呑みだ。 先週、私が落として、三つに割れてしまった。
娘のさくらが横に座って、私の手を見ながら聞いた。 「お母さん、それ、捨てないの?」
「捨てないよ。直すの」
私は細い筆で、割れたところに特別な漆を塗った。 しばらく置いておいて、乾いたら、その上から金の粉をつける。 これが金継ぎというやり方だ。 本で読んで、去年から少しずつ練習している。
「新しいの、買えばいいのに」とさくらが言った。
「新しいのを買ったら、この湯呑みはなくなるでしょう。直したら、これからも使えるよ」
さくらはしばらく黙っていた。 それから、光っている金の線を、指でそっと触った。
「きれいだね。割れる前より、きれいみたい」
私は笑って、「そうかもね」と言った。
「ねえ、次に何か割れたら、私が直していい?」
「いいよ。でも、わざと割らないでね」
