里の春、山の春(三)
仔鹿をみるとおじいさんは、桜をひとえだ折って、その小さい角にむすびつけてやりました。
「さア、かんざしをあげたから、日のくれないうちに山へおかえり。」
仔鹿はよろこんで山にかえりました。
坊やの鹿からはなしをきくと、お父さん鹿とお母さん鹿は口をそろえて、 「ぼオんという音はお寺のかねだよ。」 「おまえの角についているのが花だよ。」 「その花がいっぱいさいていて、きもちのよいにおいのしていたところが、春だったのさ。」 とおしえてやりました。
それからしばらくすると、山のおくへも春がやってきて、いろんな花はさきはじめました。
