一寸法師(三の三)
そしてありったけの大きな声を振り立てて、
「これこれ、このお方をだれだと思う。三条の宰相殿の姫君だぞ。うっかり失礼なまねをすると、この一寸法師が承知しないぞ。」 とどなりました。
二匹の鬼はこの声に驚いて、よく見ますと、足もとに豆っ粒のような小男が、いばり返って、つッ立っていました。 鬼はからからと笑いました。
「何だ。こんな豆っ粒か。めんどうくさい、のんでしまえ。」 というが早いか、一匹の鬼は、一寸法師をつまみ上げて、ぱっくり一口にのんでしまいました。 一寸法師は刀を持ったまま、するすると鬼のおなかの中へすべり込んでいきました。 入るとおなかの中をやたらにかけずり回りながら、ちくりちくりと刀でついて回りました。
鬼は苦しがって、「あッ、いたい。あッ、いたい。こりゃたまらん。」 と地びたをころげ回りました。 そして苦しまぎれにかっと息をするはずみに、一寸法師はまたぴょこりと口から外へ飛び出しました。 そして刀を振り上げて、また鬼に切ってかかりました。 するともう一匹の鬼が、「生意気なちびだ。」
といって、また一寸法師をつかまえて、あんぐりのんでしまいました。 のまれながら一寸法師は、こんどはすばやく躍り上がって、のどの穴から鼻の穴へ抜けて、それから眼のうしろへはい上がって、さんざん鬼の目玉をつッつきました。
すると鬼は思わず、「いたい。」 とさけんで、飛び上がったはずみに、一寸法師は、目の中からひょいと地びたに飛び下りました。 鬼は目玉が抜け出したかと思って、びっくりして、「大へん、大へん。」 と、後をも見ずに逃げ出しました。
するともう一匹の鬼も、「こりやかなわん。逃げろ、逃げろ。」 と後を追って行きました。
「はッは、弱虫め。」
