一寸法師(三の一)
一寸法師は宰相殿のお屋敷に使われるようになってから、体こそ小さくても、まめまめしくよく働きました。 大へん利口で、気が利いているものですから、みんなから、「一寸法師、一寸法師。」といって、かわいがられました。
このお屋敷に十三になるかわいらしいお姫さまがありました。 一寸法師はこのお姫さまが大好きでした。 お姫さまも一寸法師が大そうお気に入りで、どこへお出かけになるにも、「一寸法師や。一寸法師や。」といって、お供にお連れになりました。 だんだん仲がよくなるうち、何といっても二人とも子供だものですから、いつかお友達のようになって、時々はけんかをしたり、いたずらをし合って、泣いたり笑ったりすることもありました。 ある時またけんかをして、一寸法師が負けました。 くやしまぎれに一寸法師は、そっとお姫さまが昼寝をしておいでになるすきをうかがって、自分が殿さまから頂いたお菓子を残らず食べてしまって、残った粉をお姫さまの眠っている口のはたになすりつけておきました。 そして自分はからっぽになったお菓子の袋を手に持って、お庭の真ん中に出て、わざと大きな声でおいおい泣いておりました。 その声を聞きつけて、殿さまが縁側へ出ていらしって、「一寸法師、どうした。どうした。」とお聞きになりました。 すると一寸法師は、さも悲しそうな声をして、「お姫さまがわたくしをぶって、殿さまから頂いたお菓子をみんな取って食べておしまいになりました。」といいました。 殿さまはびっくりして、お姫さまのお部屋へ行ってごらんになりますと、お姫さまは口のはたにいっぱいお菓子の粉をつけて、眠っておいでになりました。 殿さまは大そうおおこりになって、おかあさんを呼んで、「何だって、姫にあんな行儀の悪いまねをさせるのだ。」
