ただの天気の話
月曜日の朝、田中さんは会社のエレベーターに乗った。 少し遅れて、同じ部署の山本さんも乗ってきた。
「おはようございます」と山本さんが言った。 「おはようございます。今日は、いい天気ですね」と田中さんが答えた。
すると山本さんは、急に困った顔になって、頭を下げた。 「本当に申し訳ありません。今朝は電車が止まってしまいまして……。次からは、もっと早く家を出ますので。」
田中さんは、きょとんとした。 遅刻のことなど、何も言っていない。 ただ、天気の話をしただけなのだ。
「いえ、あの、私はただ、空が晴れているなと思っただけで……」
言い終わる前に、エレベーターのドアが開いた。 二人は何も言えないまま、廊下を歩いていった。 田中さんのたった一言の挨拶が生んだ、月曜日の朝の、小さな誤解だった。
