祖父の赤い車
夜、居間で祖父がテレビを見ている。 私が隣に座ると、祖父は昔の話を始めた。
「昔、赤い車を持っていたことがあるんだ」と祖父は言った。
私はその車を見たことがない。 写真も残っていない。 でも祖父の話は、いつも長い。
「その車で、おばあちゃんとよく海に行ったよ。若いとき、二人でね」
祖父は笑っている。 話しているとき、祖父の目は、とても優しい。
「今の車も好きだけど、あの赤い車は特別だったなあ」
外は暗くなっていた。 私は立って、お茶を入れに行った。 祖父の長い話は、まだ続いていた。
