文福茶がま(二の三)
そして木戸口に座って大きな声で、
「さあ、さあ、大評判の文福茶がまに毛が生えて、手足が生えて、綱渡りの軽わざから、浮かれ踊りのふしぎな芸当、評判じゃ、評判じゃ。」 と呼び立てました。
往来の人たちは、ふしぎな看板とおもしろそうな口上に釣られて、ぞろぞろ見世物小屋へ詰めかけて来て、たちまち、まんいんになってしまいました。
やがて拍子木が鳴って、幕が上がりますと、文福茶がまが、のこのこ楽屋から出て来て、お目見えのごあいさつをしました。 見るとそれは思いもつかない、大きな茶がまに手足の生えた化け物でしたから、見物はみんな「あっ。」と言って目をまるくしました。
それだけでもふしぎなのに、その茶がまの化け物が両方の手に唐傘をさして扇を開いて、綱の上に両足をかけました。 そして重い体を器用に調子をとりながら、綱渡りの一曲を首尾よくやってのけましたから、見物はいよいよ感心して、小屋もわれるほどのかっさいをあびせかけました。
それからは何をしても、文福茶がまが変わった芸当をやって見せるたんびに、見物は大喜びで、
「こんなおもしろい見世物は生まれてはじめて見た。」 とてんでんに言いあって、またぞろぞろ帰っていきました。 それからは文福茶がまの評判は、方々にひろがって、近所の人はいうまでもなく、遠国からもわざわざわらじがけで見に来る人で毎日毎晩たいへんな大入りでしたから、わずかの間にくず屋は大金持ちになりました。
