止めたあとで
夜、財布を開けて、血の気が引いた。 カードを入れている場所が空だった。
二日前、病院の会計で使ったのが最後だ。 それから一度も出していない。 家の中を三十分探して、それでも見つからなくて、私は通帳の裏に書いてある番号にかけた。
「紛失のご連絡ですね。お名前と、生年月日をお願いします」
担当者の声は落ち着いていた。 私が答えると、少し間があって、それから「確認させていただきます」と言われた。 待たされている間、悪い想像ばかりが浮かんだ。
「お待たせしました。二日前のお支払い以降、ご利用はございません」
「じゃあ、まだ誰にも使われていないんですね」
「はい。ただ、勝手に使われないように、今すぐ停止いたします。よろしいですか」
「心当たりの場所には、もう連絡されましたか」
これは向こうからの質問だった。 私は病院に電話したことを話した。 落とし物は届いていないそうです、と。
「なお、一度停止しますと、あとでカードが見つかってもお使いいただけません。よろしいでしょうか」
「はい。それでも構いません」
カードはその場で止まった。 新しいカードは、一週間ほどで家に届くそうだ。 再発行の間は、窓口と通帳でお金をおろせると教えてもらった。
電話を切って、ようやく息をついた。 それから、何となく、病院へ着ていった上着をもう一度見た。 内側にもポケットがあるのを、私は忘れていた。
カードは、そこにあった。
もう使えないカードを、私は財布の元の場所に戻した。 次からは、電話をかける前に、上着のポケットを見るようにしよう。
