あなたの背中は美しいです
りょう:エマ、聞こえる? 画面、真っ暗だけど。
エマ:聞こえるよ。カメラ、壁に向けてるの。
りょう:え、どうして。
エマ:部屋がすごく汚いから。プライバシー、大事でしょ。
りょう:それ、プライバシーって言うのかな。
エマ:言う言う。……ねえ、今日も日本語で話していい?
りょう:もちろん。ゆっくりでいいよ。
エマ:うん。ちょっと待って。アプリに入れるから。
りょう:はいはい。
エマ:えっと……「あなたの背中は美しいです」。
りょう:……え? 僕の背中?
エマ:うん。とても美しい。
りょう:エマ、僕、カメラのほうを向いてるよ。背中は見えないと思うけど。
エマ:あれ。おかしいな。私が書いたのは、後ろの景色のこと。
りょう:あ、背景ね。背景と背中。アプリが自動的に翻訳して、間違えたんだ。
エマ:ええっ。ひどい翻訳。
りょう:まあ、同じ『背』の字だからね。国際交流は大変だ。
エマ:でも、後ろのあれ、本当にきれいだよ。窓の外の白い花。
りょう:ああ、桜。今週から咲いてる。
エマ:見たい。カメラ、そっちに向けて。
りょう:いいよ。ちょっと待ってね。……あ、エマ。
エマ:何。
りょう:カメラ、動いてるよ。部屋、全部見えてる。
エマ:……見なかったことにして。
