電信柱と妙な男(一)
ある町に一人の妙な男が住んでいた。 昼間はちっとも外に出ない。 友人が誘いにきても、けっして外へは出なかった。 病気だとか、用事があるとかいって、出ずにへやの中へ閉じこもっていた。 夜になって人が寝静まってから、独りでぶらぶら外を歩くのが好きであった。
いつも夜の一時ごろから三時ごろの、だれも通らない町の中を、独りでぶらぶらと歩くのが好きであった。 ある夜、男は、いつものように静かな寝静まった町の往来を歩いていると、雲突くばかりの大男が、あちらからのそりのそりと歩いてきた。 見上げると二、三丈もあるかと思うような大男である。
「おまえはだれか?」と、妙な男は聞いた。
「おれは電信柱だ。」と、雲突くばかりの大男は、腰をかがめて小声でいった。
「ああ、電信柱か、なんでいまごろ歩くのだ。」と、妙な男は聞いた。
電信柱はいうに、昼間は人通りがしげくて、俺みたいな大きなものが歩けないから、いまごろいつも散歩するのに定めている、と答えた。
