同じお願い、三つの言い方
日本語の教科書には「水をください」と書いてある。 それは正しい。 でも、生活の中では、同じお願いが、相手によって少しずつ形を変える。
コンビニで水を買うとき、店員には「これ、お願いします」で十分だ。 丁寧だが、短い。
病院で、薬を飲むための水をもらうときは、もう少し長くなる。 「すみません、お水を一杯いただけませんか」。 「いただけませんか」の部分に、相手を大切に思う気持ちが入っている。
友達に頼むときは、もっと短くなる。 「ちょっと水取って」。 「ください」も「お願いします」もいらない。 仲がいいから、短くていい。
面白いのは、この三つが全部、同じお願いだということだ。 言いたいことは変わらない。 変わるのは、相手が誰かということだけだ。
だから、日本語を習うとき、新しい言葉を覚えるだけでは足りない。 同じ言葉を、誰に言うのかを覚える必要がある。 初めて会った人に自己紹介するときの言い方と、その人と一年後に話す言い方は、同じではない。
そして、これは特別に難しいことではない。 日本人も、子供のときに少しずつ覚えていく。 学校の先生には「先生、これ見てください」、友達には「これ見て」。 同じ日に、同じ子供が、両方使っている。
