瘤とり(一の五)
といいました。
おじいさんは心の中では、「しめた。」と思いながら、わざとびっくりした風をして、「おやおや、とんでもないことをおっしゃいます。目玉を抜かれましても、鼻を切られましても、この瘤を取ることだけはどうかごかんべん下さいまし。長年の間、わたくしが宝のようにしてぶら下げている、だいじなだいじな瘤でございますから、これを取り上げられましては、ほんとうに困ってしまいます。」といいました。
鬼のおかしらはこれを聞くと、「それ見ろ。あのとおり惜しがっている瘤だ。あれに限る、取り上げておけ。」といいました。
手下の鬼はすぐそばへ寄ってきて、「それ、とるぞ。」といいながら、ぽきりと瘤をねじ切ってしまいました。 でも少しも痛くはありませんでした。
ちょうどその時、夜が明けて、からすがかあかあ鳴きました。
「やあ、大へん。」 鬼どもはびっくりして、立ち上がりました。
「明日の晩はきっと来い、瘤を返してやるから。」こういいながら、みんなあわててどこかへ消えていきました。
おじいさんはその後で、そっと顔をなでてみました。 そうすると、長年じゃまにしていた大きな瘤がきれいに無くなって、後はふいて取ったようにつるつるしていました。
「これは有り難い。ふしぎなこともあるものだ。」
おじいさんはうれしくってたまらないので、早くおばあさんに見せてよろこばしてやろうと、首を振り振り、急いでうちまで駆けて帰りました。
おばあさんは、おじいさんの瘤がきれいに取れているので、びっくりして、「おや、瘤をどこへやったのです。」と聞きました。 おじいさんはこういうわけで、鬼がしちに取って行ったのだといいました。 おばあさんは、「まあ、まあ。」といって、目をまるくしておりました。
