飴だま(一)
春のあたたかい日のこと、わたし舟にふたりの小さな子どもをつれた女の旅人がのりました。
舟が出ようとすると、
「おオい、ちょっとまってくれ。」
と、どての向こうから手をふりながら、さむらいがひとり走ってきて、舟にとびこみました。
舟は出ました。
さむらいは舟のまん中にどっかりすわっていました。ぽかぽかあたたかいので、そのうちにいねむりをはじめました。
黒いひげをはやして、つよそうなさむらいが、こっくりこっくりするので、子どもたちはおかしくて、ふふふと笑いました。
お母さんは口に指をあてて、
「だまっておいで。」
といいました。さむらいがおこってはたいへんだからです。
子どもたちはだまりました。
しばらくするとひとりの子どもが、
「かあちゃん、飴だまちょうだい。」
