頑固です
四月から、三人のアルバイトが駅前の新しい店に移る。 向こうの店長に頼まれて、黒木は閉店後のパン屋でメモを書いていた。 「性格を一言で。三十字以下で。」
一人目は、高校生の男の子。 黒木はつい「内気」と書いて、消した。 内気だと、悪いところみたいに読める。 「大人しい」に直したが、それも違う。 あの子は静かではなく、会話が少ないだけだ。 二駅乗り換えて来て、一度も遅刻しなかった。 黒木は「真面目。無口ですが、たまに笑います。」と書いた。
二人目は大学生の女の子。 「明るくて、親切」。 三秒で書けた。 しかし、誰でも明るいと書かれる。 一行足した。 「雨の日、外の椅子を拭くのはいつもこの人でした。」
三人目が難しかった。 朝のパンを焼いていた人だ。 忙しい日にレジを代わってと頼んでも、ぶどうパンの前から動かなかった。 一生懸命という言葉は合わない。 「頑固」以外に、合う言葉がなかった。
黒木は「頑固です」と書き、その下にもう一行足した。 「この店のぶどうパンは、十年間同じ味です。」
消しゴムを使ったのは、一人目だけだった。
