鬼六(一の二)
大工は、妙な、気味の悪いやつが出て来たと思いながら、わざとへいきで、
「うん、おれか。おれは頼まれたから、この川に橋をかけようと思って考えているのだ。」
といいました。
すると鬼は顔じゅう口にして、ぎえッ、ぎえッ、ぎえッと、さもおもしろそうに笑いました。 そうして、大きな歯をむき出したまま、
「ふ、ふ、ふ、お前、いくら名人でも、大工にゃあこの橋はかからないぞ。」
といいました。
「じゃあ、だれならかかる。」
「そりゃあこのおれならかかるよ。」
「じゃあ頼む、お前さん後生だ、代わりにかけておくれ。」
「そりゃあかけてやってもいいが、何をお礼にくれる。」
「そりゃあかけてくれればなんでも上げるよ。」
「じゃあお前、その目玉をよこせ。」
「なに、目玉だ。」
大工もこれには少し驚きましたが、なにその時はその時でどうにかなるだろうと思って、
「よし、よし、お安い御用だ。」
といって、承知してしまいました。
