ゼロが一つ
金曜日の夜は、家族でトランプをする。 今日は「大富豪」というゲームだ。
お父さんが、とても強い。 もう三回も勝っている。 「お父さん、また勝った。七万点だ」とお父さんが言った。
お姉さんは、ちょっと怒っていた。 「私はゼロ点。一回も勝てないよ」
自分のカードを見たら、いいカードばかりだった。 今度こそ勝てる、と思った。 カードを出して、出して、最後の一枚を出した。 「上がり!」
「けんた、すごい」とお姉さんが言った。 「やった。僕も七万点だ」と僕は言った。
でも、お父さんが笑って言った。 「けんた、もう一度、点を数えてごらん。それ、七千点だよ」
僕は、数を間違えていたんだ。 ゼロが一つ、足りなかった。
お姉さんが、大笑いした。 「ゼロが好きなのは、私じゃなくて、けんただったね」
