一寸法師(三の四)
と、一寸法師は、逃げて行く鬼のうしろ姿を気味よさそうにながめて、「やれやれ、とんだことでした。」 といいながら、そこに倒れているお姫さまを抱き起こして、しんせつに介抱しました。 お姫さまがすっかり正気がついて、立ち上がろうとしますと、すそからころころと小さな槌がころげ落ちました。
「おや、ここにこんなものが。」 と、お姫さまがそれを拾ってお見せになりました。
一寸法師はその槌を手に持って、「これは鬼の忘れて行った打ち出の小槌です。 これを振れば、何でもほしいと思うものが出てきます。 ごらんなさい、今ここでわたしの背を打ち出してお目にかけますから。」
こういって、一寸法師は、打ち出の小槌を振り上げて、「一寸法師よ、大きくなれ。あたり前の背になれ。」 といいながら、一度振りますと背が一尺のび、二度振りますと三尺のび、三度めには六尺に近いりっぱな大男になりました。
お姫さまはそのたんびに目をまるくして、「まあ、まあ。」 といっておいでになりました。
一寸法師は大きくなったので、もううれしくってうれしくって、立ったりしゃがんだり、うしろを振り向いたり、前を見たり、自分で自分の体をめずらしそうにながめていましたが、一通りながめてしまうと、急に三日三晩なんにも食べないで、おなかのへっていることを思い出しました。 そこでさっそく打ち出の小槌を振って、そこへ食べきれないほどのごちそうを振り出して、お姫さまと二人で仲よく食べました。
ごちそうを食べてしまうと、こんどは金銀、さんご、るり、めのうと、いろいろの宝を打ち出しました。 そしていちばんおしまいに、大きな舟を打ち出して、宝物を残らずそれに積み込んで、お姫さまと二人、また舟に乗って、間もなく日本の国へ帰って来ました。
