お茶会のクッキー
その日、公民館では月に一度のお茶会が開かれていた。 町内会の会長のけいこさんは、入り口で一人の女性を待っていた。 先月引っ越してきた、みほさんである。
「みほさん、よくいらっしゃいました」とけいこさんが声をかけた。 みほさんは、手作りのクッキーを持って、少し緊張した様子で立っていた。
「そんなに緊張しなくても大丈夫。皆、優しい人ばかりですから」
日本では、新しい土地に引っ越してきたとき、近所の人にあいさつをする習慣がある。 でも、一人ではなかなか勇気がいる。 そこで、けいこさんが「一緒に行きましょう」と誘ってくれたのだ。
部屋の中には、十人ほどの人がいた。 けいこさんは、みほさんの肩にそっと手を置いて、皆に紹介した。
「先月、二丁目に引っ越してきた、みほさんです。よろしくしてあげてくださいね」
「皆さんで、どうぞ」と、みほさんがクッキーのお皿を出す。 あっという間に、お皿は空になった。
引っ越してきたら、必ずあいさつをしなければならない、という決まりがあるわけではない。 でも、こうして顔を知っておくと、困ったときに助け合える。 それが、この町のいいところだ。
「また来てもいいですか」とみほさんが聞くと、けいこさんは笑って答えた。 「もちろん。次は、一緒に楽しみましょうね」
