三時間目、生物
職員室の時間割に、江口の名前が入っていた。 三時間目、二年三組、理科。
理科の先生が急に休んだのだ。 江口の科目は音楽で、来週のコンサートの練習をしたかった。
サンドイッチを食べながら、教科書を開いた。 理科は物理と化学と生物に分かれている。 数学なら問題をやらせればいいし、地理なら地図を見せればいい。 理科は、どれが今日なのかも分からない。
教室に入ると、生徒が言った。 「先生、今日は生物ですよ。理科室じゃなくて、ここで」
教科書を開くと、魚の体の勉強だった。 サケの絵がある。 「じゃあ、この魚の体の名前、分かる人」と江口は聞いた。
生徒が次々に手を挙げた。 おかげで、江口は何も説明しなくてよかった。 それから、音楽の授業と同じやり方にした。 手をたたいて、リズムをつけて、みんなで三回言わせる。 隣の教室に聞こえたが、江口はかまわず続けた。
チャイムが鳴った。
「先生、来週も理科ですか」とさっきの生徒が聞いた。
「いいえ。私の科目は音楽です」と江口は答えた。
「え、音楽の先生だったんですか」
廊下から、さっきのリズムが聞こえていた。
