玄関の声
日曜日の昼、ひなのは妹のあかりとテレビを見ていた。 二人ともまだパジャマのままだった。
「ちょっと、そこ、あたしが座ってたとこ」とひなのが言った。
「先に取ったもん」とあかりが答えた。
その時、玄関のチャイムが鳴った。 隣のみつこさんだった。 ひなのが出ると、みつこさんは母がいるかと尋ねた。
「母は今、買い物に出かけています。三時ごろには戻ると思います」とひなのが言った。 さっきまでの声とは全然違う、静かで丁寧な声だった。
みつこさんは、作りすぎたからと言って、煮物の入った皿を出した。
「そんな、すみません。いつもいただいてばかりで」とひなのは言った。 何度も遠慮したが、みつこさんは皿を置いて帰っていった。
ドアが閉まった。 ひなのは皿を持って居間に戻った。
「あかり、これ、冷蔵庫入れといて」とひなのが言った。
あかりは姉を見て笑った。 「今の声、お母さんに聞かせたい」
ひなのは何も言わないで、リモコンを取り上げた。
