雷のさずけもの(二の三)
といったまま、かまわず撞木に手をかけますと、その手をまた鬼がつかみました。 子供はおこって、あべこべに鬼の頭をつかみました。 そしていきなり鬼の首を引き抜こうとしました。 鬼はびっくりして、「これは驚いた、とんでもないやつが出てきた。」と思って、逃げ出そうとしました。 けれど子供はしっかり鬼の頭をつかまえていて放しません。 鬼は苦しまぎれに子供の髪の毛をつかんで、負けずにこれも首を引き抜こうと骨を折りました。 どちらも負けず劣らぬえらい力でしたから、えいやえいや、両方で頭の引っ張りこをしているうちに、夜が明けかかって、鶏が鳴きました。 すると、鬼はびっくりして、あわてて頭の皮をそっくり子供の手に残したまま、にげて行ってしまいました。
夜がすっかり明けはなれると、みんなが心配して見に来ました。 そして子供がとくいらしく、髪の毛のついた鬼の頭の皮を振り回すのを見て、ますますびっくりしました。
鬼というのは、昔このお寺で悪いことをして殺された坊さんが、お墓の中から毎晩出て来るのでした。 しかしこのことがあってから、二度と鬼の姿を見ることがなくなりました。 そして鬼の残して行った頭の皮は、元興寺の宝物として残ったそうです。
