瘤とり(一の四)
おじいさんはもうすましたもので、一生懸命、のびたり、ちぢんだり、縦になり、横になり、左へ行き、右へ行き、くるりくるりと木ねずみのように、元気よくはね回りながら、「よう、こりゃこりゃ。」とお酒に酔ったような声を出して、さもおもしろそうに踊りました。
だんだん鬼どももみんな釣り込まれて、いっしょに手拍子を合わせながら、「うまいぞ、うまいぞ。」「しっかりやれ。」こんなことをいいながら、はちきれそうな大笑いをして、おじいさんの踊りに夢中になっていました。
踊りがすむと、おかしらも感心して、おじいさんに、「こんなおもしろい踊りははじめてだ。じいさん、明日の晩も来て、踊りを踊るのだぞ。」といいました。
おじいさんはとくいになって、「へえへえ、おいいつけがなくともきっとまいりますよ。今晩は何しろ急なことで、おけいこをして来ませんでしたから、明日の晩までには、ゆっくりおさらいをしてまいりましょう。」こういうと、その時右手の三ばんめに座っていた鬼が口を出して、「いいや、ああはいっても、その場になると横着をきめて出てこないかも知れません。約束を違えさせないために、何か、しちに取っておいてはどうでしょう。」といいました。
おかしらは、「なるほどそれはいいだろう。」とうなずきました。
「それでは何がいいだろう。何を取り上げておいたものだろう。」と鬼どもは、わいわい相談をはじめました。
「烏帽子がいい。」という者もありました。 「斧はどうだ。」という者もありました。
おかしらはみんなの騒ぐのを止めて、「いや、何よりもいちばん、あのじいさんのほおの瘤を取るのがいいだろう。瘤は福のあるものだから、じいさんのいちばんだいじなものに違いない。」
