国籍という欄
国籍とは、その人がどの国に属しているかを表す、書類の上の決まりである。 パスポートに書かれ、役所の書類の欄にも書かれる。 その決まり方は国によって違う。 万一パスポートをなくしても、国籍がなくなるわけではない。
これに対して、「どこの人ですか」という質問は、まったく別の質問だ。 こちらが聞いているのは、育った場所や、家で使っている言葉や、家族が住んでいる場所である。 二つは互いに関係があるが、同じものではない。 主な違いは、誰が決めるかである。 国籍は国が決め、どこの人かは本人が答える。
答えがぴったり重なる人もいる。 生まれた国で育ち、そこで働き、その国の国籍を持っている人だ。 一方で、重ならない人も多い。 一家で別の国に移り住み、そこで大きくなった子どもは、育った場所と書類の国が違うことになる。 別の国で長く暮らす人を移民と呼ぶことがあるが、本人がどこを母国と呼ぶかは、その人によって違う。
「外国人」という言葉も、その場所によって変わる。 同じ人物が、ある国では外国人と呼ばれ、別の国では呼ばれない。 同じ飛行機の乗客が、着いた空港で二つの列に分かれるのは、そのためだ。
国民という言葉は、法律や政治の話で使われることが多く、その国の国籍を持つ人を指す。 市民という言葉は、もう少し広く使われる。 多くの市では、図書館の会員証は住所があれば作れるし、ごみの出し方の案内も、住んでいる人みんなに届く。
スポーツの国の代表に選ばれるかどうかも、多くの場合は国籍で決まる。 育った場所ではない。 留学生も、日本語のレベルも、国籍とは別の話である。 国籍は今後変わる人もいるし、生まれた時のまま変わらない人もいる。
「どちらの方ですか」と聞かれて、「日本です」と答えたあと、「でも育ったのは別の場所です」と一言付け加える人がいる。 答えが二つあるからだ。
入国の書類には、国籍を書く欄が一つある。 育った場所を書く欄は、ふつうない。 二つの答えを持つ人も、そこには一つしか書かない。
