猿かに合戦(二の一)
かには柿の種をさっそくお庭にまきました。 そして、「早く芽を出せ、柿の種。出さぬと、はさみでちょん切るぞ。」と言いました。
すると間もなく、かわいらしい芽がにょきんと出ました。
かにはその芽に向かって毎日、「早く木になれ、柿の芽よ。ならぬと、はさみでちょん切るぞ。」と言いました。
すると柿の芽はずんずんのびて、大きな木になって、枝が出て、葉が茂って、やがて花が咲きました。
かにはこんどはその木に向かって毎日、「早く実がなれ、柿の木よ。ならぬと、はさみでちょん切るぞ。」と言いました。
すると間もなく柿の木にはたくさん実がなって、ずんずん赤くなりました。 それを下からかには見上げて、「うまそうだなあ。早く一つ食べてみたい。」といって、手をのばしましたが、背がひくくってとどきません。 こんどは木の上に登ろうとしましたが、横ばいですからいくら登っても登っても落ちてしまいます。 とうとうかにもあきらめて、それでも毎日、くやしそうに下からながめていました。
するとある日猿が来て、鈴なりになっている柿を見上げてよだれをたらしました。 そしてこんなにりっぱな実がなるなら、おむすびと取りかえっこをするのではなかったと思いました。 それを見てかには、「猿さん、ながめていないで、登って取ってくれないか。お礼には柿を少し上げるよ。」と言いました。
猿は、「しめた。」と言わないばかりの顔をして、「よしよし、取って上げるから待っておいで。」と言いながら、するする木の上に登っていきました。 そして枝と枝との間にゆっくり腰をかけて、まず一つ、うまそうな赤い柿をもいで、わざと、「どうもおいしい柿だ。」と言い言い、むしゃむしゃ食べはじめました。
