部長の説明
新しいアプリが会社に入った。 部長は朝から、そのアプリを田中に説明していた。 この後、ほかの社員にも教えるつもりらしい。
「田中君、これは便利だぞ。ここを押したら、会議の予定が全部出てくる」
「へえ、すごいですね」と田中は言った。 本当は、田中は昨日もう全部使ってみたのだけれど、何も言わなかった。
部長は自信を持って、画面を指でさわった。
「そして、この青いボタンを押すと、資料が送られる。私はもう覚えてしまった。若い人より早いだろう」
「はい、確かに早いです」
部長は時々間違えても、気にしないで説明を続けた。
「注意することは一つだけだ。赤いボタンは押すな。押したら、大変なことになるぞ」
その時、部長の指が、赤いボタンにあたってしまった。
画面が急に変わって、大きな音が鳴った。
「部長……それ、ゲームのアプリですよ」
部長は朝からずっと、違うアプリを説明していたのだ。
