番地は最後
雨だった。 堀内は車を止めて、品物を膝に置いた。 番地の数字が水でにじんで読めない。 郵便番号と電話番号だけが残っていた。
伝票の連絡先にかけると、若い男の人が出た。
「郵便局の堀内と申します。今、近くまで参っております。お住まいは中野区で、お間違いないですか。」
「はい、グリーンハイツの三〇二です。」とダニエルが答えた。
「郵便番号は一六四の〇〇一二まで読めます。その次の町名から、お願いします。」
「町名……えっと、本町です。」
「何丁目でしょうか。」
「五丁目。番地は十二の三です。すみません、日本の住所は、いつも下から言ってしまって。メールアドレスもお伝えしましょうか。」
「いえ、番地だけで大丈夫です。」 堀内は窓の外を見た。 「お寺の向かい側に、白い建物がありますか。」
「あります。そこの三階です。雨で大変ですね。」
少し黙ってから、ダニエルが続けた。 「……青い制服の人が、下に立っています。」
「はい。私です。」
電話の向こうで、ダニエルが大笑いした。 住所で読めたのは郵便番号だけだったが、それは最初から合っていた。
