書き初め
正月の二日は、昔から物事を始める日とされている。 この日に、その年で初めて筆を持って字を書くことを、書き初めという。
使う紙は細長い。 書くのは、たいてい短い言葉だ。 「初日の出」「新しい風」のように、四つの文字が選ばれることが多く、その年にこうなりたいという願い事を、そのまま字にする場合もある。
昔は、元日の朝にくんだ水で墨をすり、その年の縁起がよいとされる方角を向いて書く習わしだった。 今そこまでする家は少ないが、一年の初めに書く字を大事にする気持ちは残っている。
学校では、書き初めは冬休みの宿題として出されることが多い。 三学期が始まると、体育館に長い机を並べて、みんなで一緒に書く「書き初め大会」が開かれる学校もある。 静かな体育館に、紙をおさえる音と、筆が紙をこする音だけが響く。
なぜ最初の一字が大事だと言われるのか。 新しい年に初めて筆を持ったとき、その一字に、その人の心の持ち方や、一年の始め方が表れると考えられてきたからだ。 だから、練習は何枚してもいいが、最後に出す一枚は、自分で選ばなければならない。
書き終わった紙は、地域によっては、一月十五日ごろに神社で燃やされる。 左義長、あるいはどんど焼きと呼ばれる行事で、正月の飾りと一緒に火に入れられる。 このとき、燃えた紙が高く舞い上がると、字が上手になると言われている。
一方、学校に貼り出されたものは、二月になってもそのまま廊下に並んでいる。 墨がはみ出した「元気」の二文字が、窓から入る光の中で、少し斜めになったまま留められている。
