色のあせた写真
みどりさんは、机の引き出しを開けた。 中に、古い写真が一枚あった。
それは、結婚式の写真だった。 写真の色は、少し薄くなっている。 ずいぶん長い時間が、たっているからだ。
写真の中のみどりさんは、白いドレスを着て、笑っている。 となりには、若い夫がいる。 二人とも、とても幸せそうだ。
「もう、五十年も前だ」と、みどりさんは小さい声で言った。
あの日は、天気がよかった。 桜が、きれいだった。 たくさんの人が、来てくれた。
夫は、三年前に、先に亡くなった。 今、家には、みどりさん一人だ。
でも、みどりさんは、さびしくない。 この写真を見ると、あの日のことを、はっきり思い出せるからだ。
みどりさんは、写真を、そっと引き出しに戻した。 そして、静かに、笑った。
