ゾウの糸
僕はポチ。 この家の犬だ。 僕の一番大切なものは、ゾウのぬいぐるみだ。
小さいときからずっと一緒に寝ている。 だから、去年の春、耳が取れてしまった。
母さんはそれを見つけると、テレビを見ながら、針と糸で耳をつけてくれた。 「はい、直ったよ」
夏、庭で遊んでいたら、今度は足が取れた。 中から白い綿が出てきた。 僕は心配になって、ゾウを口にくわえて台所へ行った。
母さんは僕の顔を見て、すぐ分かったみたいだった。 歌を歌いながら、また足をつけてくれた。 前より少し短い足になったが、ゾウはちゃんと立った。
冬、今度はしっぽが取れた。 僕はまた台所へ行った。
母さんは「これは難しいなあ」と言ったが、やっぱり最後まで直してくれた。
今、ゾウの体には糸の線が三本ある。 耳と、足と、しっぽ。 店で売っている新しいぬいぐるみのようには、きれいじゃない。 でも僕は、このゾウがいい。
この間、遊びに来た子供が言った。 「これ、もう捨てたら?」
母さんは首を横に振って、こう言った。 「捨てないよ。ポチの宝物だからね」
