そこは部屋じゃありません
望月さんは玄関のドアを開けた。 「さあ、どうぞ。ここで靴を脱いでください」
マリアは靴を脱いで、上がった。 長い廊下が続いていた。
「あちらがトイレで、その隣がお風呂です。階段の上は私たちの部屋です」と望月さんが言った。
「トイレ、お風呂、階段」とマリアは小さい声で言った。
廊下の奥に和室があった。 畳の部屋だ。 望月さんが戸を開けた。 中には何もなかった。
「ここがマリアさんの部屋ですよ」
マリアは「はい」と言って、隣の戸も開けた。 「じゃあ、こちらも私の部屋ですね」
「そこは押し入れです」と望月さんは笑った。 「夜、布団を出す所です。マリアさんは入りません」
