六月十二日から
恋人ができる前に、日本では「告白」と呼ばれる短いやり取りが行われることが多い。 片方が「好きです。付き合ってください」と伝え、もう片方が答える。 それだけの場面だが、この一言があるかないかで、二人の関係の名前が変わる。
告白の前に、何度かデートをしていることも珍しくない。 食事に行き、映画を見て、連絡は毎日取り合う。 相手の話に耳を傾け、次に会う日をその場で決める。 そういう時間が何週間か続くこともある。 それでも、はっきり言葉にするまでは、相手を恋人と呼んでいいのかどうか分からない。 告白という場面は、その分からない時間を終わらせるためにある。
もちろん、全ての人がこうするわけではない。 共通の友人の紹介や、偶然の出会いから、自然に始まる恋愛もある。 世代によっても違い、年上の人からは「言葉にした覚えはない」という話もよく聞く。 恋愛に対する考え方は個人によって違い、何日も作戦を立てる人がいれば、勇気を出して五分で伝える人もいる。
始まってすぐは、勤め先や学校では内緒にしておく二人も多い。 関係が落ち着くまで静かに保ちたい、ということらしい。 呼び方が名字から名前に変わる人もいる。 月に一度だったデートが、週に一度になる。 大きな出来事が起きるわけではないが、暮らしの形は少しずつ変わっていく。
始まりがはっきりしている分、別れもはっきりさせなければならない、と言う人もいる。 結婚を申し込むプロポーズにも、似たところがある。 日付のある一言が、その後を分ける。
だから、付き合っている人に「いつから?」と聞くと、月と日で答えが返ってくることが多い。 「六月十二日から」というように。 その日は告白のあった日で、二人が最初に会った日ではない。
