電話の練習
明日から、由紀は駅前の本屋で働きます。 初めてのアルバイトです。
「電話が一番心配」と由紀が言いました。 「絶対、変な声になる」
台所から直子が来ました。 「じゃあ、練習しよう。私がお客さん」
「ええ……恥ずかしいよ」
直子は手を耳に当てて、電話の形を作りました。 「プルルル」
「もしもし。あ、違う」と由紀が言いました。
「もう一回」
由紀は少し息を吸いました。 「お電話ありがとうございます。みどり書店です」
声は静かで、まっすぐでした。 直子は何も言いませんでした。
「え、今の、私?」と由紀が言いました。
「うん。全然変じゃなかったよ」と直子が言いました。
「そう?」 由紀は少し笑いました。 「じゃあ、もう一回やる」
