桃太郎(一の二)
こういいながら、おじいさんはわらじをぬいで、上に上がりました。その間に、おばあさんは戸棚の中からさっきの桃を重そうにかかえて来て、
「ほら、ごらんなさいこの桃を。」
と言いました。
「ほほう、これはこれは。どこからこんなみごとな桃を買って来た。」
「いいえ、買って来たのではありません。今日川で拾って来たのですよ。」
「え、なに、川で拾って来た。それはいよいよめずらしい。」
こうおじいさんは言いながら、桃を両手にのせて、ためつ、すがめつ、ながめていますと、だしぬけに、桃はぽんと中から二つに割れて、
「おぎゃあ、おぎゃあ。」
と勇ましいうぶ声を上げながら、かわいらしい赤さんが元気よくとび出しました。
「おやおや、まあ。」
おじいさんも、おばあさんも、びっくりして、二人いっしょに声を立てました。
「まあまあ、わたしたちが、へいぜい、どうかして子供が一人ほしい、ほしいと言っていたものだから、きっと神さまがこの子をさずけて下さったにちがいない。」
おじいさんも、おばあさんも、うれしがって、こう言いました。
そこであわてておじいさんがお湯をわかすやら、おばあさんがむつきをそろえるやら、大さわぎをして、赤さんを抱き上げて、うぶ湯をつかわせました。するといきなり、
「うん。」
と言いながら、赤さんは抱いているおばあさんの手をはねのけました。
「おやおや、何という元気のいい子だろう。」
おじいさんとおばあさんは、こう言って顔を見合わせながら、「あッは、あッは。」とおもしろそうに笑いました。
そして桃の中から生まれた子だというので、この子に桃太郎という名をつけました。
