少しだけ
猫のもなかは、去年より少し丸くなった。 奏もそう思っていた。 でも、少しだけだ。
動物病院で、白石先生がもなかを台に乗せた。 数字が止まった。
「六キロ七百グラムですね」と白石先生が言った。 「去年の体重は、五キロ九百グラムでした」
「その台、おかしくないですか」と奏が言った。 「うちのはかりでは、五キロでしたよ」
白石先生は笑って、床の体重計を指した。 「じゃあ、測ってみましょう。まず、奏さんだけ乗ってください」
五十二キロ四百グラム。 次に、奏がもなかを抱いて乗った。 五十九キロ百グラム。
「引くと、六キロ七百グラムです」と白石先生が言った。 「猫は小さいですから、少しの重さでも大きいんですよ」
奏は黙った。 それから、小さい声で言った。 「でも、去年の首輪が、まだ入るんです」
白石先生は首輪を外して、長さを測った。 そして、穴を一つずつ指した。
「サイズが変わっていますね。三つ、先の穴を使っています」
奏は思い出した。 春に、自分で伸ばした。
「ご飯を一日五十グラム減らしましょう」と白石先生が言った。
奏は「少しだけ」と言おうとして、やめた。
