注射はまだですか
山口:大野さん、どうぞ。こちらに座ってください。インフルエンザの注射ですね。
大野:はい。あの、先に言ってもいいですか。わたし、体は大きいですけど、注射が本当にだめなんです。
山口:大丈夫ですよ。左の腕を出してください。
大野:左ですね。あの、目を閉じてもいいですか。
山口:はい、閉じてもいいですよ。
大野:それから、話してもいいですか。話していると、少し楽なんです。
山口:どうぞ。
大野:きのう、インターネットでたくさん調べたんです。針は短いんですよね。血はどの程度出ますか。
山口:熱心ですね。血はほとんど出ませんよ。ちょっと冷たいですよ。
大野:冷たい!あ、アルコールですね。でも、針はまだですよね。
山口:はい、動かないでくださいね。
大野:動きません。全然動きません。……まだですか。まだですよね。
山口:はい、いいですよ。
大野:いいですよって、何がですか。じゃあ、どうぞ。お願いします。
山口:もう終わりましたよ。目を開けてもいいですよ。
大野:え?
山口:ここを軽く押さえてください。もまないでくださいね。三十分ぐらい、待合室で座っていてください。
大野:はい。……あ、痛い。
