四人一組
(経済学部の演習室。黒板に「四人一組」と大きく書いてある。)
れん:……あのさ、あおいさん、グループもう決まった?
あおい:まだ。さっきまで三人と話してたけど、抜けてきた。
れん:抜けてきたの。
あおい:うん。あの三人、もともと仲がいいでしょ。私が入るとちょうど四人になるんだけど、ちょうどすぎるっていうか。
れん:なんとなく分かる。
あおい:れん君は?
れん:見てのとおり、一人。さっきから机を拭いてる。
あおい:拭きすぎだよ、それ。
れん:ほかにやることがなかった。
あおい:じゃあ、二人でグループ組む?
れん:組むのはいいけど、四人そろわないと登録できないらしいよ。
あおい:あと二人か。
れん:今日休んでるのが二人いる。前の授業で同じ班だった二人。
あおい:ああ、あの二人ね。連絡先なら分かる。
れん:どうする。
あおい:名前だけ書いて、先に出しちゃおうよ。あとで言えばいいし。
れん:それはさすがにまずいって。
あおい:まずい?
れん:休んでる日に、自分の名前が勝手に決定されてたら、僕なら嫌だ。
あおい:……確かに。
れん:先に連絡だけしよう。返事が来てから登録する。
あおい:来なかったら?
れん:締め切りは金曜だから、木曜の夜まで待つ。それで返事がなければ、先生に相談する。
あおい:れん君、意外としっかりしてるね。
れん:意外は余計。
(あおいがスマートフォンでメッセージを送る。)
あおい:送った。「二人でグループ組むんだけど、入らない?」って。
れん:協力してくれるといいけどな。
あおい:あ。
れん:どうした。
あおい:一人、もう返ってきた。「入れといて」だって。
れん:早いな。
あおい:三秒だよ。休んでるのに。
れん:熱があっても指は動くんだね。
あおい:もう一人も来た。「よろしくお願いします」。
れん:じゃあ、四人だ。登録の手続き、僕がやっとくよ。
あおい:ありがとう。名前の順番、どうする?
れん:五十音順でいいんじゃない。
あおい:それだと私が一番上になっちゃうけど。
れん:じゃあ、代表で。
あおい:待って、その決め方でいいの?
れん:さっきまで机を拭いてた男が決めるよりはいいと思う。
