はじめてのメッセージ
日曜日の午後、ゆうたはおばあちゃんの家に行った。 台所のテーブルの上には、買ったばかりのスマホが置いてある。
「おばあちゃん、アプリを入れて、アップデートもしておいたから。これでお母さんと話せるよ」とゆうたは言った。
おばあちゃんは眼鏡をかけて、画面をじっと見た。 指で強く押してみるが、何も起こらない。
「押すんじゃなくて、軽く触るだけでいいよ」
おばあちゃんが触ると、画面が変わって、丸い写真が並んだ。
「この人がお母さん。ここに字を書いて、右の矢印を押すと送れる」
おばあちゃんは、一文字ずつゆっくり書き始めた。 最初の一文字が、なかなか見つからない。 一文字も書かないうちに、指が矢印に当たった。
スマホが小さく鳴った。 何も書いていないメッセージが、お母さんに届いてしまった。
「あら、大変。これ、消せる?」
「大丈夫。もう一回書けばいいよ」とゆうたは言った。
おばあちゃんは何度も間違えた。 二度目は写真を送ってしまい、三度目は途中で画面が消えた。 四度目に、やっと「げんきですか」と送ることができた。
すぐに返事が来た。 「元気だよ。おばあちゃん、すごいね」
おばあちゃんは声を出して笑った。 それから、ゆうたの方を見ずに、また一文字ずつ書き始めた。 時間はかかったが、今度は矢印を間違えなかった。
ゆうたのスマホが鳴った。 画面を見ると、おばあちゃんからだった。
「ゆうたが教えてくれました。ありがとう」
「同じ部屋にいるのに」とゆうたは言った。 それでも、その文字をしばらく見ていた。
